巨人の沢村投手は、2017年2月の沖縄キャンプ中、右肩に異変を感じ、同27日に球団トレーナーのはり治療を受けた。
長期間症状が改善しないので調査した結果、複数の医師から「長胸神経麻痺」と診断され、「外的要因によるもので、はり治療によって長胸神経麻痺となり、前鋸筋機能障害を引き起こした可能性が考えられる」とのこと。

巨人が澤村拓一に謝罪 トレーナーの施術ミスで神経麻痺の可能性が高まる

長胸神経麻痺(リュックサック麻痺)

リュックサックを背負ったときに肩紐が脇に食い込んで、長胸神経が圧迫されて麻痺が生じることがある。他には長胸神経が伸長される動作(テニスのサーブ、投球、ゴルフのスイング、体操の吊り輪、重量挙げ等)でも生じることがある。
長胸神経が麻痺すると、前鋸筋が動かないので、肩甲骨の抑えが効かなくなり「翼状肩甲骨」という状態になる。
日本整形外科学会のページ

はり治療で長胸神経麻痺?

昔巨人軍の槙原寛己投手が、トレーナーの鍼治療で気胸になったことがありました。
気胸なら「飲食店で食中毒」みたいなもので、あってはいけないことだけど、起こりうる事故です。
これがはり治療で神経麻痺となると、首をひねってしまいます。
仮の話で、「気胸にしてくれ」と頼まれたら技術的には簡単に出来ますが、「神経を麻痺させてくれ」と頼まれても麻痺させる自信はありません。
どのくらいの太さと長さの鍼で、どの部位にどのくらい鍼を刺したのかが明らかになっていないので詳細はわかりませんが、鍼で神経麻痺が生じたという症例を聞いたことがありません。

「鍼 神経麻痺」で検索しても、神経麻痺の治療としての鍼治療ばかりが出てきます。
これが「注射 神経麻痺」で検索すると、注射による神経麻痺の症例がたくさん出てきます。

鍼治療についてほとんど知らない(知ろうとしない)医師もいるので、鍼を注射の事故と同様に考えているのかもしれません。
鍼治療を知っている医師であれば、このような見解にはならなかったでしょう。

はり治療での神経まひ「可能性は極めてゼロ」
元メジャーリーガー小宮山悟氏の見解。

医師が何と言ったのか正確なことは分かりませんが、「ピッチングで傷めたかもしれないし、ストレッチで傷めたかもしれないし、トレーナーのはり治療やマッサージで傷めた可能性も考えられる」と言ったのを、メディアが「はり治療」だけクローズアップして取り上げたのかもしれません。

どのような施術をしたのか?

トレーナーがどのような施術をしたのか詳しいことは分かっていません。
長胸神経麻痺は伸長動作や圧迫で生じるので、マッサージやストレッチで伸長されて傷めた可能性は考えられます。

1)澤村投手は前鋸筋を傷めて右肩に異変があって、トレーナーの施術を受けた。
2)トレーナーは、鍼治療に加えマッサージやストレッチも行った。
3)傷めていた前鋸筋がストレッチで伸長されて、長胸神経を損傷。
という可能性は十分考えられます。

澤村投手は長胸神経麻痺の要因がある

澤村投手は「ピッチング」・「筋トレ好き」と長胸神経を傷めやすい要因は揃っているので、トレーナーの施術の有無に関わらず長胸神経麻痺になった可能性はあります。
右肩に異変⇒はり治療 という時系列から考えても、すでに長胸神経を損傷していたかもしれません。

トレーナーの施術ミスで長胸神経麻痺になったとしたら

2月27日の施術で長胸神経麻痺になったとしたら、投球練習の時点で調子が悪いのが分かったはず。
そんな状態で、3月4日のオープン戦に登板出来るだろうか?
前鋸筋が働かず肩甲骨の抑えが効かない状態で投げたのか?
当初はイップスといわれていたが、もっと早期に長胸神経麻痺に気付かなかったのか?

疑問は尽きませんが、いずれもっと詳しい事情が分かることを期待します。