※6/5よりフォーカルジストニアの治療の新規受付をします。
フォーカル・ジストニアは、主に手指など局所に生じるので局所性ジストニアとか、音楽家や手指を酷使する人に多い疾患なので、職業性ジストニアともいわれる。
私がフォーカル・ジストニアを知った2011年頃は情報がほとんどありませんでしたが、今はフォーカル・ジストニアの体験を綴ったブログや手術をした人のブログなど参考になる情報がたくさんあります。
ただしこれが正解というものは残念ながらありません。
フォーカル・ジストニアとは
・演奏時に指が巻き込む、重なる、固まるなど演奏に支障が出る。
・ある日突然症状が出るわけではない。
・ペンが持ちにくいとか、箸が使いにくいなど演奏以外でも支障がでることがあるが、まったく手指が動かないということはなく、生活に困らない程度には動かすことができる。
・痛みや痺れはない(腱鞘炎やギヨン管症候群を併発している場合は除く)。
・イップス(精神的要因)ではない。
フォーカル・ジストニアは脳神経が原因と考えられているが…
フォーカル・ジストニアはジストニアの一種として、脳や神経に異常があるという前提で研究・治療が行われている。
ジストニアは大脳基底核に異常があると考えられているが、原因ははっきりしていない。ジストニアは痙性斜頸(首がねじれる)、腕や脚がよじれる、舌が出る等他者からみても明らかに病的な症状が現れる。
脳梗塞やパーキンソン病、神経麻痺など脳や神経が原因の病気は、手がまったく動かない、振戦(震える)など日常生活に支障をきたす病的な症状が見られる。
フォーカル・ジストニアは、まったく動かないとか振戦するとかはなく、生活に困らない程度には動かすことができる。
脳神経の病気にしては障害部位が局所的(だからfocal)で、他の脳疾患と比べると症状が軽すぎる。
神経障害にしては、神経の支配領域と障害の部位が一致しないことが多い。
フォーカル・ジストニアの原因として(脳神経以外に)考えられること
フォーカル・ジストニアで共通しているのは、虫様筋(ちゅうようきん)が委縮し機能不全をおこしていること。
虫様筋は指先で物を摘まむときに働く筋肉。
虫様筋には手指のセンサーとしての機能があると考えられていて、虫様筋が機能不全になると手指の繊細なコントロールが難しくなるので、指を早く動かすことができなくなり、微妙な力加減もできなくなる。
虫様筋が機能不全になると、それを補おうとして無意識に浅指屈筋を使って指を動かすようになる。
この動作を代償動作という。
フォーカル・ジストニアのまま練習を続けると、脳が代償動作を記憶し悪循環に陥る。
フォーカル・ジストニアと虫様筋・浅指屈筋の関係
演奏家の問題
楽器や楽曲の向き不向き
体格に合った楽器かどうか?
体力に見合った楽曲かどうか?
陸上競技で例えると。
短距離は得意だが長距離が苦手な選手。
走り幅跳びは得意だが走り高跳びは苦手な選手。
同じ陸上競技でも向き不向きがあるように、楽器や楽曲にも向き不向きがある。
体力(筋力)の違い
同じように練習してもフォーカル・ジストニアになる人もいれば、ならない人もいる。
体力(筋力)の差。
曲の難易度が高くなるほど手指への負担は増大するが、楽器の演奏はスポーツと違い全身性の疲労を感じないので、演奏者当人は大きな負担が掛かっている自覚に乏しく、身体のメンテナンスをしない、睡眠や栄養(食事)に気を使わない傾向がある。
自分の体力に適した練習量を見極めずに、練習漬けになっているとフォーカル・ジストニアのリスクが高くなる。
フォーカル・ジストニアは演奏から離れたほうがよい?
回復期に入り虫様筋が動くようになってきたら、楽器の演奏はリハビリになるが、虫様筋が機能しないうちは楽器を弾いても代償動作をしているだけ。
演奏会の予定が入っていたりすると、代償動作で練習しなければならないが、代償動作で練習しても上達はしない。
フォーカルジストニアは演奏から離れたほうがいい理由を九九で例えると
フォーカル・ジストニアの治療を希望される方へ
鍼怙灸では、プロ、プロを目指している音楽家を対象にフォーカル・ジストニアの治療をしています。
楽器の種類は、ピアノ・ギターが多く、弦楽器や管楽器の方もいます。
治療はあくまで回復を手助けするに過ぎず、根気よくリハビリをすることが大切です。
虫様筋と浅指屈筋のストレッチ
治療をするにあたって
1)なかなか改善した実感がないため途中で諦めてしまう人が多いですが、効果がみえてくるまで半年~1年、根気よくリハビリを続けてほしいです。
2)生活の改善。食事や睡眠、適度な運動と一般的に健康によいとされる当たり前のことを行う。
3)ある程度回復するまでは楽器の演奏から離れることが望ましい。楽器を弾く時間があったらリハビリを頑張ってほしいです。
4)鍼治療に抵抗がないこと。虫様筋や骨間筋、浅指屈筋の治療は鍼が効果的ですが、鍼が苦手だと効果的な治療ができません。
フォーカル・ジストニアの施術料
フォーカル・ジストニアの判定基準
フォーカル・ジストニアの判定基準としてTubiana Scale(チュビアナ スケール)があります。
Grade0
演奏できない。
Grade1
いくつかの音符は演奏できるが器用さの不足または
欠如のために中断する。
Grade2
短いシークエンスを速くなく不安定な指使いで演奏する。
Grade3
やさしい小曲を限定的に演奏する。速いシークエンスは
動きの混乱を生じる。
Grade4
ほぼ正常に演奏するが、技術的に難しいパッセージは
運動障害の不安のために避ける。
Grade5
正常に演奏でき、舞台での演奏に復帰する。
フォーカル・ジストニアのいろいろな治療法
最近はフォーカルジストニアの情報も増えているので、よく考えて後で後悔しないよう治療法を慎重に選択してください。
・ボトックス注射
ボツリヌス菌を注射して筋肉の緊張を緩める。
可能であれば浅指屈筋にしてもらうと効果的。
・定位脳手術
パーキンソン病で用いることがある手術をFDにも応用。
・tDCS(経頭蓋電気刺激)
頭皮から脳への電気刺激を与える治療。
・薬物療法
パーキンソン病の薬やてんかんの薬を使う。