フォーカル・ジストニア

フォーカル・ジストニアとは

フォーカル・ジストニアは、主に手指など局所に生じるので局所性ジストニアとか、音楽家や手指を酷使する人に多い疾患なので、職業性ジストニアともいわれます。

・少しずつ手指が思い通りに動かなくなり、演奏時に手指が曲がったり、伸びたり、重なったり、固まったり、広がらないなど演奏に支障が出る。
※ある日突然手指が動かなくなるわけではない。
・演奏やキーボード・マウス、書字など手指を使う作業で、不必要に力が入ったり、指が伸びたり曲がったりで思い通り動かないことがあるが、日常生活では病的な症状は出ない。

・痛みや痺れはない(腱鞘炎やギヨン管症候群を併発していることもある)。
・練習でも本番でも弾きにくさは変わらない(精神的要因がない)。

フォーカル・ジストニアは脳や神経に原因があるのか?

フォーカル・ジストニアは、手指が勝手に巻き込んだりして思い通りに動かないことから、ジストニアの不随意運動の一種と考えられて、脳や神経に異常があるという前提で研究・治療が行われている。
確かに脳疾患や神経麻痺に似ているところはあるが、しっくりしない部分もある。
脳梗塞やパーキンソン病、ジストニア、神経麻痺など脳や神経が原因の病気は、演奏どころか日常生活で明らかに病的な症状が見られ、生活にも大きな支障がでる。
フォーカル・ジストニアの症状は神経の支配領域と一致しないことが多く、演奏に支障はあっても日常生活に大きな支障がでることは少ない。

私が治療に携わってきた経験から、ジストニア(脳)が原因じゃないか?と疑われる症状の方は今のところ1人だけです。
その方はリラックスした状態で手指がピクピク動くので、「意図的に動かしましたか?」と聞くと、「動かしていません」という。
ジストニアの不随意運動に該当する状態。

あとの方はジストニアというより、手指の筋肉の萎縮(筋肉が痩せて縮んだ状態)が原因と考えたほうがしっくりします。
手指の筋肉の萎縮なら、リラックスした状態では手指は勝手にピクピク動きません。

フォーカル・ジストニアの治療について

東京鍼怙灸では、プロ、プロを目指している音楽家を対象にフォーカル・ジストニアの治療をしています。
楽器の種類は、鍵盤とギターが多いです。

フォーカル・ジストニアは、良くなるまでの期間が長いので、数回の治療で諦めてしまう人が多いですが、効果がみえてくるまで早くて半年。
正しいリハビリ方法が理解できないと、1年経っても全く良くなりません。
通院を強制するものではありませんが、数回の治療で良くなると思っている人や、良くなるまで長い時間がかかることが理解できない人の治療はお断りしています。
途中で演奏会などの予定が入ると治療がやり直しになるので、できれば演奏会の予定がない状態で治療を開始するのが望ましいです。

⇒フォーカル・ジストニアの施術料

フォーカル・ジストニアは演奏から離れたほうがよい?

ほとんどの人が数カ月後とかに演奏会の予定が入っていたりしますが、演奏会を入れてしまうとなかなか回復しません。
フォーカル・ジストニアの状態で演奏すれば、どうしても誤魔化した弾き方に頼るしかない。
誤魔化した弾き方が脳に記憶されて、これから治ろうとしていた筋肉が再び萎縮してしまう。
フォーカル・ジストニアの状態で演奏するのは、捻挫した足でジョギングするようなもの。
演奏は本人が思っているより遥かに過酷な動きを手指に強いている ということを認識する必要があります。

短時間であれば、初心者向けの簡単な曲は弾いても構いません。

筋肉の萎縮は回復に時間がかかる

筋肉の萎縮(筋肉が痩せて縮んだ状態)は、回復に時間がかかります。
まずは痩せた筋肉に栄養(血液)を与え、少しずつ無理のない範囲で縮んだ筋肉をストレッチしていく。
萎縮した筋肉を無理やりストレッチすると、肉離れや筋断裂の危険があるので根気よく行う。
まれに演奏から離れるだけでとくに何もしなくても回復する人がいますが、基本的には適切なリハビリをしないと回復は難しい。

フォーカル・ジストニアの原因として考えられること

1)使い過ぎで筋肉が萎縮する(筋肉が痩せて縮む)。
2)血流障害による手指の低栄養状態。

楽器の演奏はレベルが高くなるほど、手指に過酷な動きが要求される。
演奏者当人は子供の頃から慣れ親しんで、徐々にレベルアップしているため、手指が激しい動きをしているという感覚に乏しい。
スポーツと違い全身性の疲労を感じないので、手指に大きな負担が掛かっている実感がない。

血流障害

同じように練習してもフォーカル・ジストニアにならない人もいる。
それは指先までしっかり血液(栄養)を供給できる人とできない人との差といってもよい。
10の血液が必要な動作に対して、10以上の血液を供給できれば問題ない。
10の血液が必要な動作に対して、9以下の血液しか供給できないと体は壊れてくる。
人手不足で残業続きの仕事と同じで、いずれ過労で倒れてしまう。

手の解剖学とフォーカル・ジストニア


演奏では本来「MP関節=虫様筋」が中心となって動く。
フォーカル・ジストニアの場合は、使いすぎで虫様筋が萎縮して、MP関節の動きが悪くなる。
MP関節の動きが悪いのだけど、痛みなど自覚症状がないので気が付かない。
MP関節の動きが悪いので、それを補おうとして無意識に浅指屈筋や深指屈筋を使って、PIP関節やDIP関節を動かして演奏するようになる。
これを代償行動という。
代償行動に気付かないまま練習を続けると、脳が代償行動を記憶し本来の動きが封印されてしまう。

ジストニアとイップス

1)ジストニア

代表的なものが痙性斜頸(首がねじれる)、他には腕や脚がよじれる、舌が出る等。
ジストニアは日常生活で明らかに病的な症状が現れる。
大脳基底核に異常があると考えられているが、原因ははっきりしていない。

2)イップス

練習(リラックスした状態)では上手くできるが、本番(緊張状態)になるとできなくなる。
誰もいなければ字が書けるが、人が見ていると手が震えて字が書けないなど、精神的な要因が考えられる。

フォーカル・ジストニアの判定基準

フォーカル・ジストニアの判定基準としてTubiana Scale(チュビアナ スケール)があります。
 
Grade0
演奏できない。
 
Grade1
いくつかの音符は演奏できるが器用さの不足または
欠如のために中断する。
 
Grade2
短いシークエンスを速くなく不安定な指使いで演奏する。
 
Grade3
やさしい小曲を限定的に演奏する。速いシークエンスは
動きの混乱を生じる。
 
Grade4
ほぼ正常に演奏するが、技術的に難しいパッセージは
運動障害の不安のために避ける。
 
Grade5
正常に演奏でき、舞台での演奏に復帰する。

フォーカル・ジストニアのいろいろな治療法

・定位脳手術
 パーキンソン病で用いることがある手術をFDにも応用。
 
・tDCS(経頭蓋電気刺激)
 頭皮から脳への電気刺激を与える治療。
 
・ボツリヌス療法
 ボツリヌス菌を注射して筋肉の緊張を緩める。
 
・薬物療法
 パーキンソン病の薬やてんかんの薬を使う。

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